「責めない」という経営資源——28年の結婚生活から学んだ、人が育つ関係のつくり方 | 人生経験を選ばれる価値に変えるサロン専門コンサル 渡辺マスヨ

目次

経営コラム:1人サロン経営支援の現場から

今回は少し個人的な話から始めます。

先日、還暦を迎えた夫と京都を旅し、その最後に思いがけない贈り物を受け取りました。

その出来事を通じて、長年連れ添った夫が「一度も私を責めなかった人」だったことを、改めて思い返しました。

一見、経営とは関係のない夫婦の話に聞こえるかもしれません。
しかし「失敗を責めない関係が、人を伸ばす」という原則は、スタッフ育成にも、顧客との関係にも、そして経営者自身の再起にも、深く関わっています。

今回は、40代・50代の1人サロン経営者の方に向けて、「責めない」という関わり方が持つ、経営上の力についてお話しします。


失敗を責められなかった28年

私は、経営の中でも家庭でも、少なからぬ失敗をしてきました。

サロンを開業して、借金が1000万円を超えたことがあります。

婚約指輪を落として失くしたこともあります。

旅先で不注意から、幼い娘に火傷を負わせてしまったこともあります。

そのどれについても、夫は私を責めませんでした。

一度だけ大きな喧嘩をしましたが、その後は「無事でよかった」「一緒に解決しよう」と、深く受け止めてくれた。

振り返ると、私が何度も立ち上がってこられたのは、この「責められない安心」が土台にあったからだと思います。

ここに、経営に通じる本質があります。

人は、失敗を責められない環境でこそ、次の挑戦ができるのです。

責める経営は、挑戦の芽を摘む

サロンにスタッフがいる場合、この原則はそのまま当てはまります。

施術のミス、予約の取り違え、クレームへの対応の失敗。

こうした場面で経営者が真っ先に「責める」と、スタッフは萎縮します。
萎縮した人は、次から「失敗しないこと」を最優先に動くようになり、挑戦も提案もしなくなります。

結果として、指示待ちのスタッフばかりになる——これは多くの店で起きていることです。

責めない、とは、失敗を放置することではありません。

「何が起きたか」「次どうするか」を一緒に考える一方で、人格や存在を否定しないということです。
事実には向き合い、人は責めない。この線引きが、挑戦できるチームをつくります。

顧客との関係にも「責めない」は効く

これはお客様に対しても同じです。

ホームケアを続けられなかったお客様、予約を直前でキャンセルされたお客様。
こうした場面で「なぜやらなかったのか」という空気を出してしまうと、お客様は居心地の悪さを感じ、足が遠のきます。

「できなかったんですね、大丈夫ですよ。
ではこうしてみましょうか」と受け止められるサロンには、お客様が安心して通い続けます。
かかりつけサロンとは、結局のところ「失敗しても責められない、安心できる場所」なのだと思います。
2,000名以上の個人経営者と面談してきた経験からも、長く愛される店には、この空気が共通しています。

経営者自身にも「責めない」を向ける

そしてもうひとつ。この原則は、経営者が自分自身に向けるべきものでもあります。

1人サロンの経営者は、うまくいかないとき、真っ先に自分を責めます。

「私の力不足だ」「なんでこんなこともできないのか」と。

しかし、自分を責め続ける経営者は、萎縮したスタッフと同じで、次の挑戦ができなくなります。

事実は直視する。数字は見る。

でも、自分の存在まで否定しない。

私が借金や失敗から立ち直れたのは、夫がそうしてくれたのと同じ姿勢を、少しずつ自分にも向けられるようになったからでした。

思考のスピードは人それぞれ、という補足

今回の贈り物には、もうひとつ気づきがありました。

夫は、私が何かを提案しても、その場では反応が薄い人です。

ときには不機嫌にすら見える。

ところが、私が忘れた頃に、ずっと深く考えていて、形にして返してくる。

スタッフや取引先にも、こうした「熟考型」の人がいます。

その場で response が薄いことを「伝わっていない」「やる気がない」と捉えるのは早計です。

人には処理のリズムがあり、後ろでしっかり動いている人がいる。

相手のスピードを信じて待つことも、人を活かすマネジメントの一部です。

まとめ——「責めない」は甘さではなく、戦略である

失敗を責めない関係は、単なる優しさではありません。

人が挑戦し、成長し、長く関わり続けるための、明確な経営戦略です。

スタッフに、お客様に、そして自分自身に。事実には向き合いながら、存在は責めない。

今日から、この線引きを意識してみてください。


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この内容は、毎朝6:30配信のstand.fm「55歳すっぴん朝ラジオ」#150でお話ししています(記念すべき150回目です)。 → stand.fmで聴く

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