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今回は少し個人的な話から始めます。
先日、還暦を迎えた夫と京都を旅し、その最後に思いがけない贈り物を受け取りました。
その出来事を通じて、長年連れ添った夫が「一度も私を責めなかった人」だったことを、改めて思い返しました。
一見、経営とは関係のない夫婦の話に聞こえるかもしれません。
しかし「失敗を責めない関係が、人を伸ばす」という原則は、スタッフ育成にも、顧客との関係にも、そして経営者自身の再起にも、深く関わっています。
今回は、40代・50代の1人サロン経営者の方に向けて、「責めない」という関わり方が持つ、経営上の力についてお話しします。
私は、経営の中でも家庭でも、少なからぬ失敗をしてきました。
サロンを開業して、借金が1000万円を超えたことがあります。
婚約指輪を落として失くしたこともあります。
旅先で不注意から、幼い娘に火傷を負わせてしまったこともあります。
そのどれについても、夫は私を責めませんでした。
一度だけ大きな喧嘩をしましたが、その後は「無事でよかった」「一緒に解決しよう」と、深く受け止めてくれた。
振り返ると、私が何度も立ち上がってこられたのは、この「責められない安心」が土台にあったからだと思います。
ここに、経営に通じる本質があります。
人は、失敗を責められない環境でこそ、次の挑戦ができるのです。
サロンにスタッフがいる場合、この原則はそのまま当てはまります。
施術のミス、予約の取り違え、クレームへの対応の失敗。
こうした場面で経営者が真っ先に「責める」と、スタッフは萎縮します。
萎縮した人は、次から「失敗しないこと」を最優先に動くようになり、挑戦も提案もしなくなります。
結果として、指示待ちのスタッフばかりになる——これは多くの店で起きていることです。
責めない、とは、失敗を放置することではありません。
「何が起きたか」「次どうするか」を一緒に考える一方で、人格や存在を否定しないということです。
事実には向き合い、人は責めない。この線引きが、挑戦できるチームをつくります。
これはお客様に対しても同じです。
ホームケアを続けられなかったお客様、予約を直前でキャンセルされたお客様。
こうした場面で「なぜやらなかったのか」という空気を出してしまうと、お客様は居心地の悪さを感じ、足が遠のきます。
「できなかったんですね、大丈夫ですよ。
ではこうしてみましょうか」と受け止められるサロンには、お客様が安心して通い続けます。
かかりつけサロンとは、結局のところ「失敗しても責められない、安心できる場所」なのだと思います。
2,000名以上の個人経営者と面談してきた経験からも、長く愛される店には、この空気が共通しています。
そしてもうひとつ。この原則は、経営者が自分自身に向けるべきものでもあります。
1人サロンの経営者は、うまくいかないとき、真っ先に自分を責めます。
「私の力不足だ」「なんでこんなこともできないのか」と。
しかし、自分を責め続ける経営者は、萎縮したスタッフと同じで、次の挑戦ができなくなります。
事実は直視する。数字は見る。
でも、自分の存在まで否定しない。
私が借金や失敗から立ち直れたのは、夫がそうしてくれたのと同じ姿勢を、少しずつ自分にも向けられるようになったからでした。
今回の贈り物には、もうひとつ気づきがありました。
夫は、私が何かを提案しても、その場では反応が薄い人です。
ときには不機嫌にすら見える。
ところが、私が忘れた頃に、ずっと深く考えていて、形にして返してくる。
スタッフや取引先にも、こうした「熟考型」の人がいます。
その場で response が薄いことを「伝わっていない」「やる気がない」と捉えるのは早計です。
人には処理のリズムがあり、後ろでしっかり動いている人がいる。
相手のスピードを信じて待つことも、人を活かすマネジメントの一部です。
失敗を責めない関係は、単なる優しさではありません。
人が挑戦し、成長し、長く関わり続けるための、明確な経営戦略です。
スタッフに、お客様に、そして自分自身に。事実には向き合いながら、存在は責めない。
今日から、この線引きを意識してみてください。
この内容は、毎朝6:30配信のstand.fm「55歳すっぴん朝ラジオ」#150でお話ししています(記念すべき150回目です)。 →
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