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年齢とともに体力が落ち、売上も伸び悩み、この先のサロン経営が不安——。サロンオーナーの高齢化にどう備えればいいのかを、愛知県岡崎市で個人エステサロンを15年経営し、2,000名以上の個人経営者の相談に応じてきた1人サロン専門家・渡辺マスヨが、3つの準備と実例でお伝えします。
「最近、売上が上がらない」「施術のあと、昔より疲れが抜けない」「この先、いつまでこの仕事を続けられるんだろう」——。
個別相談で、40代・50代のオーナーさんから、とてもよく聞く声です。そして正直に言うと、これは私自身の声でもあります。私は今56歳。愛知県岡崎市で個人エステサロンを経営して15年になります。更年期の時期には自信をなくしかけたこともありますし、つい昨夏も、貧血で施術のあとに座り込んでしまうほどでした。
1人サロンは、オーナーの体がそのまま「お店の土台」です。だからこそ、オーナーの高齢化は、避けて通れない経営課題になります。でも、悲観することはありません。年齢を重ねたからこそ打てる手、年齢を重ねたからこそ選ばれる理由が、ちゃんとあるからです。
サロンオーナーの高齢化には、次の3つの準備で備えられます。
どの準備も、体力に余裕がある「今」始めるほど、選べる道が多くなります。
高齢化への不安を感じ始めた1人サロンオーナーの最初の一歩は、今のサロンの状態を数字で見える形にすることです。不安の正体がわからないままだと、不安はどんどん大きくなるからです。
書き出してほしいのは、次の4つです。
特に見落としがちなのが、お客様の年代の変化です。長く続いているサロンほど、オーナーと一緒にお客様も年を重ねています。
私のサロンも、開業から10年の節目に、コンセプトを大きく変えました。それまでは「キラリ輝くあなたを応援する」サロンでしたが、気づけばお客様が育ち、平均年齢もぐっと上がっていた。そこで「健康で長生き」へとコンセプトを切り替え、メニューもお客様との会話の話題も、その方向へ移していきました。お客様の今に合わせて、サロンの中身も変えていく。それだけで、売上の伸び悩みが「時代とのズレ」だったと気づくこともあります。
数字を見ると、「売上が下がった」という漠然とした不安が、「リピートが減っている」「単価が低い」「客層が変わった」という、手を打てる具体的な課題に変わります。課題が見えれば、打つ手も見えてきます。
体力が落ちてきた1人サロンオーナーに必要なのは、「まだ大丈夫」と頑張り続けることではなく、「体力は少しずつ落ちていく」ことを前提に働き方を組み直すことです。具体的には、3つの方法があります。
1人サロンのオーナーは、施術のほかに、予約対応、掃除、洗濯、発注、在庫管理、SNS、経理・・・と、ありとあらゆる仕事を抱えています。
私が講座でよくお伝えしているのは、まず施術以外の業務を全部書き出してみること。施術はあなたにしかできませんが、それ以外は、人や業者やツールに任せられるものがたくさんあります。発注をご家族にお願いする、片付けを単発のアルバイトさんにお願いする、予約や顧客管理をシステムに任せる。時間と体力をお金で買うことは、決して贅沢ではありません。長く続けるための、立派な経営判断です。
施術の売上は、自分の体が動く分しかつくれません。一方で物販は、オーナーの体調が万全でない日でも売上をつくれる、体力に頼らない収益の柱です。
私自身、化粧品会社に14年勤めたあとサロンを始め、途中で「技術だけでお金をいただく」働き方を見直しました。施術で結果を出しているエステティシャンが「あなたのお肌を見て、これを選びました」とすすめる商品は、お客様にとって何より安心なもの。売り込みではなく、施術の効果を家でも続けていただくための提案として届けると、お客様の満足度も、サロンの安定も、両方が上がっていきます。
ある1人サロンのオーナーさん(開業15年)から、「事務所の2階で営業しているサロンを、自宅の1階に移すか迷っている」とご相談を受けたことがあります。私の答えは「1階が理にかなっています」でした。2階への階段は、オーナーにとっても、年を重ねていくお客様にとっても、年々つらくなるからです。駐車場からすぐ入れる1階なら、お客様の高齢化にも自然に対応できます。
体力を前提にした見直しは、メニューの時間配分、ベッドの高さ、1日の予約数の上限など、身近なところにもたくさんあります。
1人サロンの将来の不安をいちばん小さくしてくれるのは、「何歳で、どうしていたいか」というゴールを先に決めることです。ゴールがないまま走り続けるから、不安が終わらないのです。
独立2年目・50歳のオーナーさんから「この先、サロンを長く続けられるか不安」とご相談を受けたとき、私がお伝えしたのは、「この先30年、絶対に店を潰してはいけない」わけではない、ということでした。たとえば「60歳で完全に閉店して、こんな暮らしをしたい」というゴールが決まれば、そこから逆算して、必要なお客様の数も、売上も、働き方も決まってきます。
ゴールの形は、大きく4つあります。
| ゴール | どんな形か | 今からやること |
|---|---|---|
| 生涯現役で続ける | 体力に合わせてメニューを絞り、深くつながったお客様と長く付き合う | 施術時間と予約数の上限を決める/物販の柱を育てる |
| 自分がいなくても回るサロンにする | 人を育て、オーナーは経営に回る | 技術と接客を言葉にして、教えられる形にする |
| サロンを引き継ぐ・手放す | 後継者に譲る、または「オーナーになりたい人」に売却する | リピート客と集客の仕組みを整え、サロンの価値を上げておく |
| 教える側に回る | 講座やスクールで、自分の技術や接客の極意を伝える | 自分の経験を、教えられる順番に整理する |
銀座のサロンオーナーさんに将来のご相談を受けたときは、「どれを選んでもいい。でも、中途半端がいちばんいけません」とお伝えしました。半分だけ現場に出ていると、お客様は「やっぱりオーナーさんがいる日がいい」となり、いつまでも現場を離れられなくなるからです。どの道を選ぶかで、発信もメニューも変わります。だからこそ、早めに決めることが大切です。
後継者にサロンを引き継ぐときに大切なのは、①経験を言葉にして残すこと、②サロンの「らしさ」を守ること、③体力に余裕があるうちに計画を立てること、の3つです。
長年の経験は、オーナーの頭と手の中にしかありません。カウンセリングで何を聞いているか、お客様のどこを見ているか、なぜその商品をすすめるのか。普段は感覚でやっていることを、少しずつ言葉にして書き残していきましょう。マニュアルとして整えるのはもちろん、後継者と定期的に話す時間をとり、「なぜそうするのか」まで伝えていくことが、いちばんの引き継ぎになります。
私は新卒で、化粧品会社のディオール事業部に5年間勤めました。そこで学んだのは、長く愛されるブランドには、代替わりしても変わらない「らしさ」がある、ということです。
サロンも同じです。お客様が通ってくださる理由は、技術だけではありません。空間の居心地、言葉のかけ方、大切にしている考え方。そうした「このサロンらしさ」を言葉にして後継者と共有しておくと、オーナーが替わっても、お客様は安心して通い続けてくださいます。
後継者を育てるにも、サロンを売却するにも、時間がかかります。「体が動かなくなってから」では、選べる道が少なくなってしまいます。体力にまだ余裕のある今のうちに、「いつまでに、誰に、どんな形で」を考えておきましょう。売却を考えるなら、サロンの価値を上げておくことも大切です。リピートのお客様が安定していること、集客の仕組みがあることは、引き継ぐ側にとって大きな安心材料になります。
どのゴールを選んだとしても、年を重ねた1人サロンが選ばれ続けるために役立つ取り組みが3つあります。同世代のお客様に選ばれる理由をつくること、仕組みに任せること、一人で抱え込まないことです。
若いオーナーさんのキラキラしたサロンを見て、焦ってしまう日もあるかもしれません。でも、40代・50代のオーナーには、若い方には出せない強みがあります。それは、何百人ものお肌と人生を見てきた経験と、自分自身が揺らぎの時期を通ってきたからこそ言える「そのしんどさ、わかります」という一言です。
独立2年目・50歳のオーナーさんは、若いお客様向けの毛穴ケアを続けるうちに「年を重ねるほど、若い方のお相手がしんどくなる」と感じていました。そこで、同世代の女性に「あんなふうに年を重ねたい」と憧れられる存在を目指す方向へ、発信の切り口を変えていくことをご提案しました。単価の高いサロンなら、大勢来ていただかなくても、深くつながるお客様が5人、10人いれば経営は安定します。
年齢は、隠すものではありません。同世代のお客様は、同じ景色を見てきた人を選びます。
顧客管理や予約管理のシステム、LINEの予約受付やお知らせ配信、そして最近ではAIも、1人サロンの心強い味方です。私自身、50代になってからAIを使い始め、文章づくりや情報整理の負担がぐっと軽くなりました。「難しそう」と身構えず、ひとつずつ試してみてください。仕組みに任せた分だけ、あなたは施術とお客様との時間に集中できます。
1人サロンのオーナーは、真面目で責任感が強い方ほど、将来の不安を誰にも言えずに抱え込みがちです。でも、一人で考えていると、不安は堂々めぐりになってしまいます。
私のもとには、「もっと早く相談すればよかった」という声がたくさん届きます。数字を一緒に見て、ゴールを一緒に考えてくれる人がいるだけで、道はぐっと見えやすくなります。同じ立場の仲間、経営の専門家、商工会議所や公的な相談窓口など、頼れる先は思っているよりたくさんあります。「1人サロン」でも、一人で戦う必要はないのです。
サロンオーナーの高齢化に備えるためにできることは、次の3つのステップです。
年齢を重ねることは、サロンの終わりを意味するものではありません。これまでの働き方を見直し、自分とお客様にとってちょうどいい形に整える、いいタイミングです。
あなたは、何歳のとき、どんなふうに働いていたいですか。まずはその答えを、手帳に一行書くところから始めてみてください。そこから、サロンの未来は動き始めます。
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Q. サロンオーナーが年齢とともに体力が落ちてきたら、まず何から始めればいいですか? A. まずは、今のサロンの状態を数字で見える形にすることから始めてください。売上の内訳(施術・物販など)、リピートしてくださるお客様の数、お客様の年代、自分が1日に無理なく施術できる人数の4つを書き出すと、漠然とした不安が、手を打てる具体的な課題に変わります。
Q. 1人サロンは何歳まで続けられますか? A. 1人サロンを何歳まで続けられるかは、年齢そのものより「何歳で、どうしていたいか」というゴールの決め方で変わります。生涯現役で続ける、人を育てて任せる、後継者に引き継ぐ・売却する、教える側に回る——どれを選んでも正解です。ゴールが決まれば、必要なお客様の数も、売上も、働き方も逆算して見えてきます。
Q. 施術の数を減らすと、サロンの売上も下がってしまいませんか? A. 施術の数を減らしても、施術以外の収益の柱を育てれば売上は保てます。代表的なのが物販で、オーナーの体調に左右されにくい収益源になります。施術で結果を出しているオーナーが、お客様のお肌を見て選んだ商品は、お客様にとって何よりの安心材料です。売り込みではなく、施術の効果を家でも続けていただくための提案としてお届けしてみてください。
Q. 後継者がいない1人サロンは、どうすればいいですか? A. 後継者がいない場合も、サロンを手放す以外の道があります。体力に合わせてメニューを絞り生涯現役で続ける、「オーナーになりたい人」にサロンを売却する、講座やスクールで自分の技術を教える側に回る、などです。売却を考えるなら、リピート客が安定していることや集客の仕組みがあることがサロンの価値になるので、体力に余裕があるうちから整えておきましょう。
Q. サロンを誰かに引き継ぎたいとき、何を準備すればいいですか? A. まずは、自分の経験や知識を言葉にして残すことです。カウンセリングで何を見て、なぜその施術や商品をすすめるのか。普段は感覚でやっていることを書き出し、後継者と定期的に話す時間をつくりましょう。あわせて、お客様が通ってくださる「このサロンらしさ」を共有しておくと、オーナーが替わってもお客様は安心して通い続けてくださいます。
Q. 40代・50代のサロンオーナーは、若いサロンにどう対抗すればいいですか? A. 若いサロンと同じ土俵で競うより、同世代のお客様に選ばれる理由をつくるほうが、40代・50代のオーナーには向いています。何百人ものお肌と人生を見てきた経験や、自分も揺らぎの時期を通ってきたからこそ言える「そのしんどさ、わかります」という一言は、若いオーナーには出せない強みです。単価の高いサロンなら、深くつながるお客様が5〜10人いれば経営は安定します。
執筆:1人サロン専門家 渡辺マスヨ
監修:渡辺益代(あいち産業振興機構アドバイザー)
渡辺マスヨ(1人サロン専門家/ぶっ飛びリブランディングプロデューサー)